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はじめて息子が選んだ本

このあいだボローニャには今シーズン初の雪が舞い降りました。すっかり冬本番です。 さて先月、旧市街にある東洋美術研究所に初めてお邪魔してきました。 前回 お話しした図書館の読み聞かせイベントで知り合った日本人のお友達が、ここで日本語絵本のバザーがあると教えてくれたんです。 研究所には例年ボローニャ国際絵本見本市へ日本の出版社が持ち込んだものが寄贈されるのだそうで、今回は書架に並べきれなくなった分を売りに出されるということでした。 一緒に行った息子も会場に入るなりすぐお気に入りの絵本を見つけました。それがこちら。 それも納得、ぐずったときは抱っこして窓から道を行き交う車を見せればご機嫌になってくれるし、おもちゃのミニカーをいつも肌身離さず持ち歩くくらい車が大好きな新・二歳児。 ひと月ほど前からは日本語で色を認識して言えるようにもなったので、シンプルに色分けされた車が登場するこの本は彼にぴったり。案の定、本を開くなり「キイロ、アオ、ブブ!」と夢中でお喋りを始めました。 車の色ごとに、ぱっぱっぱっ、ぶーぶーぶー、と走行音も違います。こんなにシンプルなのに目にも耳にも楽しい本で、0歳の赤ちゃんから読んであげられるおすすめの一冊です。 線のないやさしいイラストはなんだか見覚えがあると思ったら、かつてマリメッコ社でも活躍していたテキスタイルデザイナーの脇坂克二さんによるものでした。 さて、バザー会場の話に戻ります。色とりどりのブーブーの本に飛びついた息子にすかさず私は「この本いいね!買って上げるねー!」と言ってお菓子を与え、その間に他の絵本を物色。 普段は街の本屋さんに連れて行ってもじっとしていないからゆっくり本を選ぶどころかすぐ退散…という調子なので今回も恐る恐る連れて来たのですが、最初に彼の気を引く本が見つかったおかげで比較的ゆっくりお買い物ができたのでした。 「ママ、これ欲しい」とはまだ言えないけど、終始この絵本を手放さなかったので自分から欲しい本を選んだようなもの。これはちょっと記念の一冊になりそうです。 ところで、わが家からボローニャ旧市街は自転車で片道20分ほどの道のり。バスは息子がじっと乗ってくれないので普段のお出かけはいつも自転車です。 でもこの日はとても寒く今にも雨が降りそうなあいにくの天気で、楽しみにしていたバザーも諦めかけていたのですが…なんだか良い本に出逢...

まねっこ絵本

イタリアも秋本番、息子は栗やどんぐりを拾って遊んだり、落ち葉の上をガサガサと楽しそうに歩いたりしてヨーロッパの短い秋を楽しんでいます。そんな秋のお散歩にぴったりな絵本を先日ボローニャ旧市街の児童図書館で借りてきました。 秋のある日。女の子が森の中でどんぐり、みのむし、落ち葉、トンボを見つけてはまねっこ遊びをしながら歩いていきます。こんな調子で、まるで 鼻歌でもうたうように。 あきぞら さんぽ かさ かさ かさ ぽとん ぽとん ぽとん あ!どんぐり そして、こう続きます。 まねっこしよう せーの! くる くる くるり 可 愛らしい水彩画とやさしくテンポの良い文章で、読んでいるほうもルンルンと愉快になってきます。 オノマトペが多いので息子もまねっこして一緒に音読できるのが楽しいです。 最後は女の子の お父さんが出てきて、一緒だったんだね、ってちょっとほっとします。そして終盤、私の好きなページがこちら。 おそらも はっぱの まねっこしてるね なんとも愛らしい表現ですね。我が子もいつかお喋り上手になったら、こんな純粋な表現いろいろ聞かせてくれるのかな。 ちなみに同じ作者の絵本で、はるかぜさんぽ、あめふりさんぽ、ゆきみちさんぽ、などのタイトルも出ています。次回日本に帰ったら読んでみたいです。       ‘ こうしてイタリアの図書館で日本の児童書に出逢えるのはとてもありがたいこと。ちなみにこの図書館、蔵書だけでなく施設も充実しているので学生時代から大好きな場所で(詳しくは こちらのイタリア情報サイト に寄稿しています)、随時いろんな催しも開催されています。先日は3歳児以下を対象にした日本語絵本の読み聞かせがあり親子で行ってきました。 童謡や手遊びの歌も交えての小一時間、息子も喜んで聞き入っていました。でも途中で集中力が切れたのか何度かプレイルームへ脱走。奥のほうに写っているのが会場で、手前の本棚を漁っているのが我が子です。 どこへ行ってもなかなかじっとしていられないお年頃ですが、こうした日本語のイベントにはこれからもなるべく連れて行きたいと思っています。参加者は意外にもうちともう一組の親子を除いて皆イタリア人だったのですが、主催者側の方やもうひとりの日本人のお母さんと知り合えたのは嬉しいことでした。 ボローニャにはそこそこの数の日本人が住...

バイリンガルの耳はもうできている

一年間の日本里帰りを終え、夏にイタリアへ帰ってきました。息子はあと一か月ちょっとで二歳を迎えます。またしばらくこのブログをお休みしていた間にますます言葉に興味を示すようになり、絵本への反応も一段と面白くなってきました。 たとえば絵、文字、数字を指さしては「これなんて言うの?」と聞かんばかりに「オォ?アァ?」と言い、返ってくる音(言葉)が面白いのか次から次へと質問攻めです。うっかりこちらが寝ぼけ眼で異なる絵に対して同じ言葉を返してしまうと、「それちがうでしょ?」と言わんばかりに「ア!ア!」と注意してくれるほどちゃんと聞き分けているから感心します。 以前ご紹介したこちらの ミッフィーのこどもずかん は毎日毎晩めくるほど今も一番のお気に入りでこの遊びにも大活躍なんですが、教えた絵と言葉をちゃんと一致させて「じゃあニンジンはどれ?帽子は?飛行機は?」と聞けばちゃんとそれを指さすことができます。同じページには15種類ほどの言葉(絵)が出てくるので大したもの。ちなみにパパがイタリア語で同じことを聞いてもちゃんと正しい絵を指します。 息子が文字にも興味を示すようになって出番が増えたのがこちらの絵本。日本でもおなじみ、おさるのジョージの原作、ひとまねこざるシリーズのアルファベット教本です。 英単語の頭文字を拾ってアルファベットを学ぶ構成になっているため、たとえば"Earは耳"だとわかるように括弧書きで説明が入っています。 これをいちいち音読するとちょっとくどくなるので本当は英語の原版が欲しかったけど、なかなか見つからず今手元にあるのはこの和訳本です。でもイラストはぬくもりがあってかわいいし、息子も大好きなジョージがたくさん出てくるので親子でお気に入りの一冊になりました。 ところでジョージにはひらがな学習の手始めにもお世話になっています。日本で買ったこのランチョンマット、ご飯を食べながら夢中で「オォ?アァ?」と指さして読み方を知りたがるんです。 さて、ここまでは目にするものを言葉で知りたがり、それをちゃんと認識して聞き分けるインプットの能力について書きましたが、学んだ言葉を自分で声に出すアウトプットの量も二歳を目前にしたこの頃になってぐんと増え始めています。 それこそ「パパ、ママ、ワンワン、ブブ(車)」など単音が重なる言葉はもうずいぶん前から口に出していましたが、...

五味太郎とペンギン親子に夢中

ずいぶんお久しぶりです。 いろいろな事情でしばらくこのブログをお休みしておりました。 書き出すとつい没頭してしまい、もっと目の前の子供との時間を優先するべきではないかと思ったり、目を傷めてしまったり。ブログの無期限休止の考えも頭をよぎりましたが、続けてほしいとの声もいただき、なんとも半年ぶりに新しい投稿を書いています。 読者のみなさん、お元気でしたか。新しく立ち寄ってくださったかた、はじめまして。 もちろん、私の絵本好きからくる息子への読み聞かせはお休みしていたわけではありません。むしろ、一歳を少し過ぎた頃から絵本への反応がどんどん積極的になって、ますます親子で一緒に読む時間を楽しんでいます。 まず、お気に入りの本というのがあって、それを毎日毎日自分で本棚から引っ張ってきては「ねえ、よんで、よんで」と言わんばかりに膝の上にのって読み聞かせをせがんでくれます。 それだけでもとってもかわいいけど、目を見張る成長といえば…最近こちらが話すことを理解し始めた彼は、絵本の内容もしっかりわかっているのです! 特に今日ご紹介するこちらの二冊は目下の大のお気に入り。まずは五味太郎さんの 「たべたのだあれ」。一歳になる前に買い与えた頃はまだ反応が薄かったのが、今ではページをめくるたびに「○○たべたのだあれ?」とこちらが問いかけると、絵を指さして「ア―、アー、」と答えてくれます。 もう一冊、息子を虜にしているのが畳の上に写っている「ぺんぎんたいそう」。親子ペンギンと一緒に、腕をふったり、足をあげたり、お尻をふったり。ほんとうにそのしぐさをまねながら何度も何度も自分でページをめくるんですよ。 最初それをしだした頃はびっくりしました。近所の図書館の司書さん一押しの絵本としてお勧めいただいたのですが、ほんとうに大当たりです。 昨夏日本に里帰りして以来、たくさんの日本語の絵本に触れ、気に入ったものは惜しまず買って集めてきました。なかには新しく出逢ったものだけでなく、子供の頃に私自身が親しんでいたけどもう手元にはなくて改めて購入したものもあります。 また普段から読書は基本的に原版の言語で、という考えの私ですが児童書に限っては日本語訳を選ぶこともあります。それは、またイタリアに戻っても日本語での語りかけや読み聞かせに力を入れていきたいから 。 あとは、今日は登場しませんが大好きなディック・ブルーナ...

絵本をめくりだした息子

ひさしぶりの投稿です。 日本にしばらく里帰りすることになり、この記事は実家の勉強机で書いています。 こんなご時世で帰国するにもいろいろと大変な思いをしましたが、ようやく両親に初孫の顔を見せることができました。毎日目じりを下げて息子の相手をしてくれる両親を見ると、本当に帰ってきてよかったと満足です。 息子もすぐになついてくれてジイバアといると楽しそう。イタリアでは3人暮らしだったけど、こちらでは家族が増え彼にも良い刺激になっている気がします。 月齢も10か月を過ぎ、できることがますます増えてきました。つかまり立ちが安定してきたので、10か月の誕生日にはファースト・スニーカーを履かせて公園へ。靴を履いただけで、赤ちゃんからぐっと幼児らしく見えました。 歩き出すのはまだ先だけど、脚の筋力がすごいです。伝い歩きはずいぶん前に始めましたが、今や自分の肩より高いベッドやソファーにもひょいとよじ登ったり、ときどき5秒くらい何もつかまずに両足で立ってみせたりして私たちを驚かせてくれます。 絵本を与えたときの反応もちょっと変わってきました。自分でページをめくるようになったんです。初めてそれをしたのがこの本。先日再会した友人からお祝いにもらいました。ミッフィーちゃんが大好きな友人らしい、可愛らしい図鑑です。 日本語と英語で動物や乗り物、食べ物の名前、それから数字やあいさつなどが載っています。ここに手書きでイタリア語もくわえて3カ国語図鑑にしました。 「これ、おうちにあるね。」とか「これ、持ってるよね。」なんて話しかけながら読み聞かせています。 イタリアへ戻るのは来年夏の予定。それまでにどれだけ日本語を吸収してくれるでしょうか。向こうに持って帰るつもりで、あいうえお や にほんご の絵本も数冊揃えました。どれも素敵なのでいつかご紹介したいです。 あいうえお はよく積木のおもちゃにもなっていますね。わが家にもこんなのがあります。実は私のおさがりなんですが、三十数年のヴィンテージとは思えないほど良い状態で両親が保管してくれていました。 帰国したその日からずっと息子のお気に入りで、両手に一つづつもってたたき合わせたり、口に入れたり、上に座ったり。これがあるといつも機嫌よく遊んでくれます。 同じ木のおもちゃでも、一昔前のものって格段に質が良い気がするのは私だけでしょうか。塗装も剥げなないし、色味...

うつりゆくもの

季節はめぐって今日から水無月、6月ですね。 イタリアには梅雨がないので、散歩したいときは初夏の日差しを避けて日陰を選ぶようになりました。あるいは夕方、といってもこちらは夜8時でもまだ明るいのですが、夜ごはんの後に歩くのが気持ち良い時期になりました。 私たちは川のそばに住んでいるので、家のすぐ隣の橋を渡って反対岸の住宅街をしばらく歩き、もう一本先の吊り橋をまた渡って川沿いをぐるっと一周するコースがこのところのお気に入りです。 1時間くらい歩くことになるので昼間だとちょっとばてそうになりますが、橋を渡るときは川面から涼しい風が吹いてきて気持ち良いし、緑がたくさんあるので鳥の囀りなんかもよく聞こえてきます。 日本は今年、異例の早さで5月に梅雨入りしたと聞きました。もし梅雨明けも早まるのなら、真夏の猛暑もいつもより早く襲ってくるのでしょうか。この時期になるといろんなところで見るのが楽しみだった紫陽花がそろそろ綺麗に咲きだすのかなと想像していますが、お天気のサイクルがずれてからっからに枯れてしまわないかちょっと心配です。 こうやって季節の花の話をすると、日本ほど四季の移ろいを自然とともに感じる国はそうないような気がします。 今住んでいるイタリアにも四季はありますが、梅雨がないからか紫陽花も日本ほど地植えで咲き乱れているところを見たことがないし、秋は短いので紅葉狩りというほど色づいた木をゆっくり楽しむこともありません。日本では束の間に咲いては散っていく花に儚い美しさを見ていた桜も、こちらではどちらかというとサクランボのなる木として見てしまいます。 そんな日本から来た私の心の琴線に触れた絵本がこちら。 もし私が日本語で出版するなら「うつりゆくもの」と題するでしょうか。原文はフランス語のようですが、こちらのイタリア語版を少し前に近所の図書館で借りて読みました。 この本を最初に目にしたのはたしか2019年のボローニャ国際絵本見本市。表紙の絵が印象的でいつか読んでみたいと思っていました。大人が手にとっても美しいと思えるようなちょっとした仕掛け絵本で、現れては消えてなくなるものが半透明のページを前後にめくることで表現されています。 悲しい気持ち、ピアノから奏でられる旋律、淹れたてのコーヒーの湯気、掃いてもすぐまた溜まる埃など。イラストの雰囲気や表現力も素敵ですが、その例として挙げられてい...

赤ちゃんの視覚発達に良い絵本

 赤ちゃんの本をもっと探してみたい と前回の投稿に書いたとたん、先日こんなセンスの良い0歳児向けの絵本をプレゼントしてもらいました。 贈り主は半年ぶりに再会した友人。大学院の下級生で、普段はアートマネジメントを研究しながら花の油絵を描くアーティストとしても活動しています。まだ彼女にこのブログのことは知らせてなかったのですが、「ちょうどこんな本が欲しいと思っていたところなの!」と大喜びで受け取りました。 La mia giornata、つまり「ぼくのいちにち」というタイトルで、赤ちゃんが朝目覚めてから夜またお布団に入るまでの一日がモノトーンに黄色の差し色だけを使ったイラストでかわいらしく描かれています。 以前どこかで、人は生まれてしばらくはパステルカラーのような淡い色が識別できないため、赤ちゃん用のおもちゃや本にはビビッドカラーがよく使われていると読んだことがあります。たとえば「うさこちゃん」でお馴染みのディック・ブルーナの絵本なんかがそうですね。 でも、この本はさらにその一段階前の、色そのものの識別さえこれからという新生児にも適しているようです。というのも、表紙にstimoli visivi in bianco e nero(白黒で視覚の刺激)とあるので気になって少し調べてみたところ、白黒の絵はコントラストが強いため視力が未熟な生後間もない赤ちゃんでも認識しやすく、結果的に視覚の発達や脳の刺激を促す効果があるとのこと。 なるほど、そんな科学的根拠に基づいて出版された本だと知ると、一見シンプルなようでなんとも奥の深い作りに感心します。毎ページにスライド式のカードが組み込まれていて、それを引き出すと背景の白黒が反転した別の絵が飛び出す仕掛けになっています。 息子にもすぐに大のお気に入りの本となり、そばに置くと夢中で飛びつきます。上や横にカードが伸びてくるのも面白いみたいで、読み聞かせると目をキラキラさせながらキャッキャッと大笑いしてくれ、他の絵本では見せなかった反応にこちらも嬉しくなりました。 どのページもbuongiorno(おはよう)、mi vesto (きがえるよ)という調子で簡単なフレーズが一つだけ書いてあり、自由に絵を見て語りかけながら読むのが楽しいです。さらに私は括弧書きしたような日本語を交互に交えて読み聞かせています。 動詞のフレーズはずっと赤ちゃ...