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ママ、早く読んで!もっと読んで!

早いもので今年も師走に入りました。前の記事から半年以上もあいてしまいましたが、読者のみなさんお元気でしたか。 私たち家族は住み慣れたボローニャから引っ越したり、息子が幼稚園に通い始めたり、いろいろと変化がありました。今は、ボローニャとヴェネチアの間にあるフェラーラという地方小都市に住んでいます。 旧市街はユネスコの世界文化遺産になっていて、そこに構えた新居はなんと15世紀(室町時代)末期の建物!文化財の指定を受けているため、売買契約が集結するのに一年と長丁場でした。 もちろん内部は改築を重ねていますが、ところどころに中世らしい名残が。絵本の背後に少し写っている白壁に交じった斑点も、その一つ。 でこぼこの漆喰壁に数々の補修跡、外壁も劣化して窓を開ける度に砂ぼこりが入り込む、変な虫がいる…など、古さゆえの不便もあるけど、新築物件では味わえない美しさに溢れています。 床の張替えなどだけ大工さんにお願いし、あとは自分たちで内装に手を加えました。真っ白だった空間に葡萄色とオリーブ色のペンキをあちこち塗ったので、家のテーマカラーになっています。バスルームのタイルもそれに合うものを生産地まで買い付けに行き、アンティークの建具はそのまま生かしました。 家の窓から見える景色も風情たっぷり。近所の教会の敷地内には、珍しく桜の木が。春にテラスからお花見するのが楽しみです。 さて、先月三歳の誕生日を迎えた息子はすっかりイタリア語が達者になりました。きっかけは幼稚園に通い始めたこと。「叔母ちゃんが買ってくれた赤いおもちゃの車はどこ?」とか、いつしか複雑な構文も口から出るように。「そんな言い回しどこで覚えたの?」とびっくりさせられることもしばしばです。 それに比べると日本語はまだまだ片言。こちらから日本語で話しかけても、返事は9割がたイタリア語なのがもどかしいところです。夫からも「もっと日本語を覚えさせないと」とプレッシャーをかけられることもありますが、日常生活で耳にする言語の比重が圧倒的にイタリア語なので仕方ありません。 発話はおぼつかずとも、こちらの言うことは理解しているから大丈夫、と気長に構え、今は日本語に触れさせる機会を増やすことは意識して続けています。読み聞かせも、絵本の言語に関わらず私からはだいたい日本語。平仮名の絵本なんかも開くようになりました。 そうこうするうち、彼の本への反応
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春の庭にて

すっかり春本番、 息子は毎日外で元気いっぱい遊んでいます。今朝は鉄道が見える公園へ行きました。列車が通ると嬉しそうに「でんしゃん!」と言います。電車と正しく言うより何倍もかわいくて笑っちゃいます。 それにしても、色とりどりの花が咲くこの時期は外に出るだけで気分が上がりますね。ミモザ、梅、木蓮、ヒヤシンス、山吹、桜の開花を見届け、今は庭のライラックと藤が満開です。 穏やかな陽気の午後にはべビーカーで散歩しながら息子を昼寝に誘い、そのまま庭でパソコンに向かうこともしばしば。彼が目覚めるまでのほんのひと時ですが、今日もそんな隙を狙ってこの記事を書いています。 さて前回、息子がしばらく肌身離さず持ち歩いていた図書館の本があるとお話ししました。それがこちら、Nel Giardino(お庭の中で)という絵本。借りたときは冬でしたが季節的には今がちょうどいい作品です。 写真は借りた帰り道の公園で遊ぶのもそっちのけで本に見入っていたときのもの。マティスの切り絵を思わせるシンプルでカラフルな絵が幼い息子にも親しみやすかったのでしょうか。 開いているのは色違いの植物が並んだ絵にSORELLE(姉妹)と書かれているページ。私には葉っぱか海藻に見えますが、なるほどそんな表現もいいですね。文字を隠して好き好きに言葉遊びを楽しんでもよさそうな自由な絵本です。 一方単語帳のように絵から誰もが連想するであろう言葉が添えられたページも多数ありました。 出だしの六ページはそのパターンですが絵が登場する順番が面白かったのでお見せしましょう。まず出てくるのが表紙にもなっているリンゴの絵。リンゴはイタリア語でMELA、ちなみに女性名詞です。 次のページがMELO。似ているけど語尾がOの男性名詞、リンゴの木という意味です。 ラテン系の言語ではこのように果実は女性名詞で樹木は男性名詞となることがあるんです。さらにページをめくるとリンゴの木が植えられたような丘、COLLINAが出てきました。まるでカメラのズームを使ったような展開ですね。 ちなみにこの本には登場しませんが、イタリア語で卵は単数形だとUOVOで男、でも複数形はUOVAで女です。これがなかなかトリッキーで、女性名詞の複数形は基本的に語尾がEとなるのでUOVEじゃないの?と質問したくなってしまいます。でもこんなことも 息子は自然に覚えていくのでしょう。バ

親であるよろこび

「二月逃げる」と母がよく言っていましたが、ほんとにあっという間であさってからもう三月。日本はじきに桃の節句ですね。うちの庭にも桃の木があったらどんなにいいことでしょう。でも代わりに、八日の国際女性デーのシンボルでもあるミモザがたくさん開いてきました。 三月と言えばボローニャでは毎年恒例の国際絵本見本市、Bologna Children's Book Fairが開催されます。それに合わせて会場の外でも様々なイラストレーターの展覧会、子供向けの催しなどサイドイベントが開催され、街中が本とアートで国際色豊かに賑わいます。六十回目となる今年は例年より早く来週六日に開幕。私も四年ぶりに参加しますが、どんな作品や人との出逢いがあるか楽しみです。 さて、我が息子はもっぱら寝る前は ムーミンの本 を、昼間は相変わらず大好きな ぶーぶーぶーの本 か ミッフィーの図鑑 を開いては知っている言葉や色を得意げに話してくれます。冬の間は公園の代わりに図書館で過ごすことも増え、彼が気に入って借りて帰った本の中でお見せしたかったものがあるのですが、しばらく肌身離さず持っていたかと思ったらすぐに飽きてしまいました。彼の定番となった三冊の魅力には敵わなかったようです。 その本はもう返してしまいましたがなかなか面白かったので詳しくは次回にでも。代わりに、今日は特別編として今月夫と自分のために買った本を二冊お見せします。いずれ過ぎゆく幼い我が子と過ごす日常が、男の子とパパ、女の子とママを主人公にそれぞれ十四場面ずつ描かれていて、思わず「わかるわかる!」と自分たちの経験と照らし合わせては笑顔になってしまう作品です。 図書館通いのある日、本棚をあさる息子を追い掛け回していたら写真左側のパパと男の子が表紙になっているほうを見つけ、その微笑ましい内容と黄色を差し色にした三色刷りの洒落たイラストに一目ぼれしました。最初に出版されたアメリカ国内外で受賞歴があるのも納得の作品で、今や十カ国語で出版されています。 図書館で出逢ったのはサイズが大きめのイタリア語版で、そのあとすぐ夫に贈ろうと英語原版を買いました。さらに 赤色を差し色にしたガールズバージョンもあると知り同じく英語版を購入。こちらもイタリア語訳を読み比べたくて図書館で取り寄せたので、こうして四冊揃った写真が撮れたわけです。 読み比べた結果、ボーイズバ

創作読み聞かせ、してますか?

冬休みも終わり、また日常が戻ってきました。 みなさまは楽しい年末年始を過ごされたでしょうか。私たち家族は南チロル地方の雪山でホワイトクリスマスを、ボローニャで穏やかなお正月を迎えました。 雪山では生まれて初めての焚火に大興奮し、凍った湖の上を歩き、真っ白な丘の斜面を笑い転げながら駆け下りていた息子。そのあとはボローニャで久しぶりにいとこのお兄ちゃんたちと遊んでまたいろいろと刺激を受けたのか、この数週間で一段と成長した気がします。 お喋りも日々上達の一途で、いつの間にか二語で話すことが多くなりました。昨日は車の中で「おうち やー!」(お家、嫌)と、まだ帰宅したくない気持ちを繰り返し訴えていました。 このように何かを拒否するときの声の調子の強いこと。イタリア語でもはっきり「No!」と主張します。でも私が相手なら日本語で「やー!」で、イタリア人の義母はしばらくそれをドイツ語の"Yes"である「Ja」(ヤー)と聞き取って意味を真逆にとっていました。 対して肯定するときの声はとても嬉しそう。イタリア語では「Sì」と言えますが、 日本語ではなぜか「ねー」と言います。まだ言葉が話せなかったときは「うん」とうなずいていたのに、いつからこうなったのでしょう。 そういえば私が「これ、おいしいねー」とか「じょうずだねー」と語りかけてきたので、その語尾をいつしか肯定のニュアンスとして理解したのかもしれません。でも、このいつもやさしめに発音してくれる「ねー」がとても微笑ましくて私は大好きです。 意思表示がますますはっきりしてきた息子、寝る前に一緒に読む絵本も彼が決め、私が選ぶものはだいたい却下されます。お気に入りの本は数か月サイクルで変わるようで、この頃は「何がいい?」と聞くとほぼ決まって「ムーミン」と答えます。 もともと私がトーベ・ヤンソンのムーミン・シリーズが大好きで、小説や絵本が家に10冊ほどあるでしょうか。小説は児童書ながら大人の心にも響く言葉が散りばめられていて哲学的だし、鮮やかな絵本はため息が出るほど美しい。でも二歳の我が子に見せるのはまだまだ先と思っていたある日、ボローニャ児童図書館の幼児向けコーナーで見つけたのがこの本でした。 借りて帰って読み聞かせてみると息子もとても気に入った様子。ページ毎にある仕掛け扉をめくりながら読むのが楽しいみたいです。扉の下には

はじめて息子が選んだ本

このあいだボローニャには今シーズン初の雪が舞い降りました。すっかり冬本番です。 さて先月、旧市街にある東洋美術研究所に初めてお邪魔してきました。 前回 お話しした図書館の読み聞かせイベントで知り合った日本人のお友達が、ここで日本語絵本のバザーがあると教えてくれたんです。 研究所には例年ボローニャ国際絵本見本市へ日本の出版社が持ち込んだものが寄贈されるのだそうで、今回は書架に並べきれなくなった分を売りに出されるということでした。 一緒に行った息子も会場に入るなりすぐお気に入りの絵本を見つけました。それがこちら。 それも納得、ぐずったときは抱っこして窓から道を行き交う車を見せればご機嫌になってくれるし、おもちゃのミニカーをいつも肌身離さず持ち歩くくらい車が大好きな新・二歳児。 ひと月ほど前からは日本語で色を認識して言えるようにもなったので、シンプルに色分けされた車が登場するこの本は彼にぴったり。案の定、本を開くなり「キイロ、アオ、ブブ!」と夢中でお喋りを始めました。 車の色ごとに、ぱっぱっぱっ、ぶーぶーぶー、と走行音も違います。こんなにシンプルなのに目にも耳にも楽しい本で、0歳の赤ちゃんから読んであげられるおすすめの一冊です。 線のないやさしいイラストはなんだか見覚えがあると思ったら、かつてマリメッコ社でも活躍していたテキスタイルデザイナーの脇坂克二さんによるものでした。 さて、バザー会場の話に戻ります。色とりどりのブーブーの本に飛びついた息子にすかさず私は「この本いいね!買って上げるねー!」と言ってお菓子を与え、その間に他の絵本を物色。 普段は街の本屋さんに連れて行ってもじっとしていないからゆっくり本を選ぶどころかすぐ退散…という調子なので今回も恐る恐る連れて来たのですが、最初に彼の気を引く本が見つかったおかげで比較的ゆっくりお買い物ができたのでした。 「ママ、これ欲しい」とはまだ言えないけど、終始この絵本を手放さなかったので自分から欲しい本を選んだようなもの。これはちょっと記念の一冊になりそうです。 ところで、わが家からボローニャ旧市街は自転車で片道20分ほどの道のり。バスは息子がじっと乗ってくれないので普段のお出かけはいつも自転車です。 でもこの日はとても寒く今にも雨が降りそうなあいにくの天気で、楽しみにしていたバザーも諦めかけていたのですが…なんだか良い本に出逢