すっかり春本番、息子は毎日外で元気いっぱい遊んでいます。今朝は鉄道が見える公園へ行きました。列車が通ると嬉しそうに「でんしゃん!」と言います。電車と正しく言うより何倍もかわいくて笑っちゃいます。
それにしても、色とりどりの花が咲くこの時期は外に出るだけで気分が上がりますね。ミモザ、梅、木蓮、ヒヤシンス、山吹、桜の開花を見届け、今は庭のライラックと藤が満開です。
穏やかな陽気の午後にはべビーカーで散歩しながら息子を昼寝に誘い、そのまま庭でパソコンに向かうこともしばしば。彼が目覚めるまでのほんのひと時ですが、今日もそんな隙を狙ってこの記事を書いています。
さて前回、息子がしばらく肌身離さず持ち歩いていた図書館の本があるとお話ししました。それがこちら、Nel Giardino(お庭の中で)という絵本。借りたときは冬でしたが季節的には今がちょうどいい作品です。
写真は借りた帰り道の公園で遊ぶのもそっちのけで本に見入っていたときのもの。マティスの切り絵を思わせるシンプルでカラフルな絵が幼い息子にも親しみやすかったのでしょうか。開いているのは色違いの植物が並んだ絵にSORELLE(姉妹)と書かれているページ。私には葉っぱか海藻に見えますが、なるほどそんな表現もいいですね。文字を隠して好き好きに言葉遊びを楽しんでもよさそうな自由な絵本です。
一方単語帳のように絵から誰もが連想するであろう言葉が添えられたページも多数ありました。出だしの六ページはそのパターンですが絵が登場する順番が面白かったのでお見せしましょう。まず出てくるのが表紙にもなっているリンゴの絵。リンゴはイタリア語でMELA、ちなみに女性名詞です。
先月のブックフェア開催中も、朝から夕方まで祖父母と過ごしたことですっかりイタリア語が上達した彼。たったの四日間私とあまりいなかっただけでいろんなことをペラペラと文章で話すようになり驚きました。日本語での発話も活発ながら文章となるとまだそのバリエーションに乏しいので、私からの語りかけもうっかりイタリア語になるところを(事情は以前二回にわたって書いています)もっと意識的に正したい思っています。
そのブックフェアの模様も少しお伝えする予定でしたね。正式名はBologna Children's Book Fair、日本ではボローニャ国際児童書見本市などとも言われていますが、今年は60回目の記念すべき開催年で、フェアが主催するイラストレーター展の歴代入選作家の原画展はじめ、アニバーサリーならではの特別企画も多数見られました。
こちらはそんな名だたるイラストレーターたちがボローニャの旧市街を描くというテーマで共演した特別展。ピンク、オレンジ、赤系の暖色で統一された壁面がひときわ華やかでした。初日に纏っていたスカーフの色が偶然おそろいだったからか、この日ここにいた私を一瞬とらえた映像がフェアのウェブサイトに公開されています。恥ずかしいですが良い記念になりました。
今回のブックフェアは私にとっても結構思い入れが強かったというか、大学院生のときに参加した四年前のお気楽さとは違いビジネスの場として挑んだので、連日とても張りつめた気持ちで会場を駆け回っていました。だけど合間にこうして原画展の前を通ってはしばし足を止め、素晴らしい作品の数々に癒されたものです。
一方、複雑な気持ちで鑑賞した企画展もありました。ウクライナのイラストレーター展です。とくに目に留まったのがこちらの二枚。左の絵からは悲しみや絶望、右の絵からは惨状の中に光る希望のようなものが伝わってきました。
私にはウクライナ出身の友人がいることもありますが、車をずっと東に走らせれば陸続きにある戦地の人々の長引く惨状はとても他人事とは思えません。来る日も来る日も非人道的な行為の報道を見ると悲しくて仕方ありません。どうかウクライナの子どもたちが一日も早く安心して絵本が読める日が来ますように。
さて、見本市と言っても会期中は様々な講演会やワークショップなどもあり、それがこのフェアの強み。私も思わぬところでキーパーソンとの会話がはずんだり、絵本作家さんたちと直接お話したり、得るもの多い四日間でした。
こちらは長年敬愛する作家、ベアトリーチェ・アレマーニャさんの講演会。会期中市内で開会した展覧会について紹介されていました。彼女の絵本はこのブログでも一冊取り上げていますが、世界的な評価も高く、当日は席に座りきれないほどの人が押し寄せ雲の上の人という感じ。でも話し出すとなんとも親しみやすい人柄がうかがえました。後日訪れた展覧会も最高でしたよ。
そしてフェア最終日、ボローニャの芸術学校で開催された彼女の別の講演会へ急遽予定が空いて駆けつけたところ、運よく終了後に少しだけ一対一でお話しすることができました。本当に優しくてチャーミングな方でした。息子に買った絵本にサインをいただき一緒に写真まで撮ってもらい、飛び上がるほど嬉しい出来事でした。
そうそう、前回とりあげた絵本の作者ミゲル・タンコさんにもフェアの会場でお目にかかれましたよ。といってもお仕事中でお話しはできませんでしたが、丁寧に手を動かす横顔からは笑顔がにじみ出ていて、絵を描くことを心から楽しんでおられるということがありありと伝わってきました。好きなことを仕事にできるって本当に素敵ですね。
それではまた次回、どうぞお楽しみに。
題 Nel Giardino
作者 Antonella Abbatiello
出版 2017年9月 TopiPittori
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