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息子へ受け継ぐ絵本

三寒四温からだんだん春の陽気が続くようになってきました。 ボローニャには緑の広がる公園がたくさんあるのでピクニックに行けたらどんなに良いだろうと思いますが、なかなか収束しないコロナウイルスによる外出制限でそうもいかず。 せめて本の世界だけでもピクニック気分をというのもなんですが、こんな季節にぴったりの絵本が家にもありました。 主人公は青と赤のとんがり帽子を被った双子のノネズミ。ここまで聞けば、きっともうお分かりですね。 中川李枝子が実妹の山脇百合子と生みだした名作、ぐりとぐらのシリーズのひとつです。1970年後半以降に生まれた人なら、幼少期にこのシリーズの本を一度は読んだことがあるのではないでしょうか。 私もその世代ですが、記憶にあるお話は大きな卵でカステラを作る最初の一作「ぐりとぐら」と、実家にあったこの一冊だけ。1988年に刷られた第17版で結構な年季が入っています。 でも今あらためて調べてみると、いろんなシリーズが出ているんですね。もともと保母さんだったという著者は、子どもたちをワクワクさせるようなお話を作りたくてこのノネズミたちの物語を書き出したそうです。 確かに、遠い記憶をたどるとカステラのお話もワクワクして読んだ気がするし、この遠足の本を読み返してみても随所にワクワクの要素が詰まっています。 たとえば野原で足をひっかけた毛糸をたどっていく先には何が…?というワクワクもそうですが、遠足に出かけた二匹のワクワク感も本のあちこちに散らばっています。 特に微笑ましいと思ったのが、二匹がお弁当を食べるお昼きっかりに目覚まし時計をセットしているところ。物語が始まるやいなや、もうそろそろ時計が鳴るころだとぐりが言いますが、実際はまだ10時だったという気の早さ。 こういう待ちきれない気持ちとか、その時間が来るまでに次々と楽しいことをしていく二匹の描写がとても生き生きしていて、こちらまで今すぐ遠足に出かけたくなってきます。 ぐり ぐら ぐり ぐら とかけ声のように主人公の名前が繰り返されるところをはじめ、まるで言葉遊びをするようなストーリーの流れがまた魅力的。親子で声をあわせて読んだらきっと楽しいでしょうね。 0歳児にはまだ早いとわかっていながらも、イタリアの住まいにはあまり日本語の本がないので息子に日本語を聞かせるべく時折音読しています。 ところで、どちらかというと大人

大好きな復刻絵本

本を読むよろこびって何でしょう。 新しい知識が増える。知らない世界を垣間見る。インスピレーションがひらめく。絵本の場合はこれらに加え、美しい挿絵を楽しめる。 こうしたことは年々増えつつある電子ブックでも可能ですが、刷られた本でしか味わえないよろこびは格別です。 たとえば、ページをめくるよろこび。ゆっくりおそるおそる、あるいはパラパラ駆け足で。自分のペースでめくれるのは紙の本だけ。 上質な紙で製本されたものなら、その指ざわり。 年季が入ったものなら、その独特の匂い。 あるいは、インクと紙ならではの温かみと深みのある発色。 特に上の三つについて、とびきり上質なよろこびを与えてくれるのがこの本です。 アメリカの画家で絵本作家だったダーロフ・イプカーの、I Like Animals。かつてボローニャ旧市街に借りていたアパートの近所にそれはそれは小さな本屋があったのですが、そこでひとめぼれしたものでした。 何が良いかって、もともと1960年に出版されたものが廃盤 となっていたところ、2014年に 初版さながらの伝統的な色味や風合いを忠実に再現したかたちで復刻出版されたものなんです。作者によるオリジナルの刷版は失われていたので、現代のリマスター技術が用いられたとのこと。 そんなことは知らず、ただそのぬくもりある色彩、やさしい手ざわり、うっとりするような挿絵が気に入って購入したのですが、ページをめくるたびにそれはそれは幸せな気持ちになれる宝物のような一冊。 こんな本にはそう巡り合えません。手持ちの数ある絵本の中で一番美しいと言っても良いかもしれません。 なかなか希少なようで、出版元のホームページでは欠品になっていたり某大型書籍通販サイトでも稀にしか出品されていなかったり。手元の一冊も例のお店では最後の在庫でした。 息子が生まれるまではアート作品のように私自身が眺めて楽しんでいましたが、彼が生後1ヵ月の頃、初めてこの本で読み聞かせをしてみました。対象年齢は小学校低学年くらいからになりそうですが、カラフルな毎ページに0歳の息子も釘付け。 声に出して読むと、とてもリズミカルな構文で書かれていることもわかります。 仮定法と未来系が繰り返し出てくるので、英語を学習中の中高生などにもお勧めできるでしょうか。 主人公は生き物が大好きな男の子。「僕が○○だったら、あんな動物、こんな鳥、それから…