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バイリンガルの耳はもうできている

一年間の日本里帰りを終え、夏にイタリアへ帰ってきました。息子はあと一か月ちょっとで二歳を迎えます。またしばらくこのブログをお休みしていた間にますます言葉に興味を示すようになり、絵本への反応も一段と面白くなってきました。

たとえば絵、文字、数字を指さしては「これなんて言うの?」と聞かんばかりに「オォ?アァ?」と言い、返ってくる音(言葉)が面白いのか次から次へと質問攻めです。うっかりこちらが寝ぼけ眼で異なる絵に対して同じ言葉を返してしまうと、「それちがうでしょ?」と言わんばかりに「ア!ア!」と注意してくれるほどちゃんと聞き分けているから感心します。

以前ご紹介したこちらのミッフィーのこどもずかんは毎日毎晩めくるほど今も一番のお気に入りでこの遊びにも大活躍なんですが、教えた絵と言葉をちゃんと一致させて「じゃあニンジンはどれ?帽子は?飛行機は?」と聞けばちゃんとそれを指さすことができます。同じページには15種類ほどの言葉(絵)が出てくるので大したもの。ちなみにパパがイタリア語で同じことを聞いてもちゃんと正しい絵を指します。


息子が文字にも興味を示すようになって出番が増えたのがこちらの絵本。日本でもおなじみ、おさるのジョージの原作、ひとまねこざるシリーズのアルファベット教本です。英単語の頭文字を拾ってアルファベットを学ぶ構成になっているため、たとえば"Earは耳"だとわかるように括弧書きで説明が入っています。


これをいちいち音読するとちょっとくどくなるので本当は英語の原版が欲しかったけど、なかなか見つからず今手元にあるのはこの和訳本です。でもイラストはぬくもりがあってかわいいし、息子も大好きなジョージがたくさん出てくるので親子でお気に入りの一冊になりました。

ところでジョージにはひらがな学習の手始めにもお世話になっています。日本で買ったこのランチョンマット、ご飯を食べながら夢中で「オォ?アァ?」と指さして読み方を知りたがるんです。


さて、ここまでは目にするものを言葉で知りたがり、それをちゃんと認識して聞き分けるインプットの能力について書きましたが、学んだ言葉を自分で声に出すアウトプットの量も二歳を目前にしたこの頃になってぐんと増え始めています。

それこそ「パパ、ママ、ワンワン、ブブ(車)」など単音が重なる言葉はもうずいぶん前から口に出していましたが、その先がなかなかでした。それがこちらに帰国してからしばらくしたある日、教えたわけでもないのに探してたものが見つかると「あったー!/Ecco!」と言うようになり、秋の初めにはちょっとむずかしい自分の名前もはっきり発音できるようになりました。

今では大人がが言うことを真似して繰り返すくせがつき、「ciao」、「uva(葡萄)」など、音が短くてシンプルな単語から少しずつ語彙力が増えています。

こうした息子の成長ぶりは本当に誇らしいものですが、すでに二語で話す同月齢のお子さんも珍しくないようです。先日は二語どころかペラペラと文章で話す男の子に出会い、年齢を聞いたら息子よりひと月だけお兄さんということでびっくりしました。

異なる母語を話す両親や家庭環境の下で育つ子供は言語習得が遅い傾向にあるとも聞いたことがあるので、うちの子はそのケースなのかもしれません。言葉が出る前の今の時期は、その土台作りとしてたくさん語りかけてあげることが大事なのだと思います。これはイタリアに戻ってから実感したことです。

というのも、生後八か月からの一年間を過ごした日本ではイタリア人のパパ以外からは常に日本語のシャワーを浴びていました。だから言葉の理解も自然と日本語が先でした。そして一歳半をすこし過ぎた頃にイタリアに本帰国となり、言語の比重が逆転。

言葉がわかりかけてきたタイミングでこの変化にどう順応するのか…というこちらの心配をよそに、イタリアに帰って間もなくイタリア語で大人が言うこともしっかり理解するようになったのです。これは日本滞在中もパパがイタリア語だけで語りかけていたおかげかもしれません。

そもそもバイリンガル教育を成り立たせる秘訣に一親一言語といううものがあり、うちの場合パパはいつもイタリア語、ママはいつも日本語で話しかけるというのが鉄則です。日本にいた頃はこれが自然に成り立っていました。日本語を話さない夫は期限付きの在日生活で何のためらいもなくイタリア語オンリーの会話に徹することができたのです。

ところが今度は私が外国人としてここイタリアで半永久的に暮らし息子をイタリア人コミュニティーの中でイタリア人として育てていく以上、頑なに日本語だけで彼に話し続けることは現実的ではありません。こちらに帰国してすぐそんな葛藤が始まりました。

この続きは次回、なるべく間をあけずにお話できたらと思っています。それではまた!

今日お話しした本について
題  ひとまねこざるのABC 
著者 
H.A. レイ (山下 明生 訳)
挿絵  H.A. レイ 
出版 1992年6月 岩波書店
原題(英語)Curious George Learns the Alphabet 

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